2013年04月27日

Android 音楽アプリの決定版? FL Studio Mobile

Android版音楽アプリとしては超期待のタイトルとなる FL Studio Mobile が先日販売になりました。早速購入して Nexus7 にインストールして色々試してみました。

fl-studio-mobile-android-splash.png

iPhone/iPad ではだいぶ以前から様々な出来の良い音楽アプリが出ていて、iPhone/iPad に直接接続できるオーディオインターフェイスやらキーボードやら色んなコントロールデバイスもどんどん充実して来ています。それと比較するとAndroidの音楽アプリの現状は二周も三周も周回遅れという感じでした。

Android にもそれなりに出来の良い音楽アプリが無い事もなかったのですが、単機能的だったり特定のジャンル向けであったりレイテンシがキツかったり、オールラウンドで決定打的なアプリに欠けていたというのが実情でした。

ご紹介する "FL Studio Mobile Android" は Image-Line 社が既に販売している iPhone/iPad の同名アプリのAndroid移植版となりますが、これは同社の主力商品であるPC版 FL Studio のモバイル版アプリという扱いになっています。

デスクトップ版 FL Studio はPC用の音楽アプリケーションとして一大勢力を担う人気があり、ループミュージックに特化したステップシーケンスUIを継承しつつ今やオーディオから何からあらゆる音楽制作に必要な機能をブチこんだリッチな音楽ワークステーションアプリに育ちました。それほどの巨大デスクトップ版アプリをそのままモバイル化するのはさすがに無理なので、モバイル版 FL Studio は機能的にバッサリと簡略化したりコンセプトも若干異なる感じに作られていますが、楽曲作成に必要な機能は一通りそろった『決定版アプリ』足り得るしっかりした音楽アプリに出来上っています。

iOS では競合する同じようなリッチな総合音楽アプリは幾つもあるため、このアプリだけが一押しという訳でもないですが、Android では現状、"FL Studio Mobile"が唯一無二の存在といって良いと思われます(現状 Android で近い存在はこのアプリあたり)

というわけでかなりお勧めな FL Studio Mobile ではありますが、ネックになりそうなのがその価格。約2000円、AppStore なら標準的あるいはやや良心的な価格といえそうですが Google Play マーケット向けとしてはかなり強気の価格設定かもしれません。

単にiOS版の価格とバランスを取ってるだけかもしれませんが、前述のとおり元々 Android では総合音楽アプリの市場が全然育ってないということもあるので、ここで牽引役としてあえて強気の設定で望むという意図もあったりするのかもしれません。ちなみにiOS版ではiPad版とiPhone版が別アプリになっていてそれぞれ ¥1,700- と ¥1,300- (2013/04/27現在)ですが、Android版はタブレット版と通常版のような区別はなく、¥1,899- を一度払えば手持ちのタブレットとアンドロイド携帯の両方にインストールできます。

ただ、Android版はまだ完全な移植バージョンとはなっておらず、現状いくつか重要な機能がiOS版(iPad)のみの機能となっていることに注意です。これらは将来のアップデートで対応されるようですが、時期などは特に明らかではないようです(つまり…その気になれば10年後、20年後ということも可能だろう…ということ………)

その欠けている一番大きな機能がオーディオ機能で、オーディオトラックの録音も編集も現バージョンのAndroid版では出来ません。従って現バージョンでは組み込み音色をつかって(昔懐しいSC-55を使ったDTMみたいに)曲を構築する事しかできません(オーディオファイルへのエクスポートは出来ます)。

プリセットの音色数も、昨今の何ギガものライブラリを供えたDAWやソフトシンセを見慣れた目からするとやや少なく必要最小限という感じですが、音色ひとつひとつのクオリティはかなり高くて音色数だけ闇雲に多いやっつけ気味のソフトシンセよりは使えるはずです。このプリセット音色もiOSの場合はアプリ内購入でナンボか払うと追加の音色をダウンロード出来るんですが、これもAndroid版は"in future updates"でなんとかしますよ、という項目のひとつとなっています。

ちなみに"in future updates" でなんとかしますよ、という項目の一覧はこんな感じです。

・オーディオトラックと波形編集
・サンプリング
・インストルメンタル(音色)ファイルの読み込み機能
・アプリがバックグラウンドで再生できるようにする
・SoundCloud にアップロード出来るようにする
・アプリ内課金で追加音色などのダウンロード

というわけでここはひとつ Image-Line を信頼して将来の update に期待しておくとしましょう。SoundCloudとかどうでもいいので、オーディオトラックは早めに対応して頂きたいですね。あと、iOS版で可能な外部キーボードの接続は、これはもちろん Android に接続できるハードウェアがそもそも存在しないので対応の予定は無い筈です。こればっかりは Android における音楽アプリの現状が変らないとどうにもなりません。←Androidでも、既にいくつかのアプリではMIDIキーボードを接続可能です(別記事を参照)。FL Studio Mobile Android における対応はどうなるかわかりません。

ちなみにオーディオの取り込みは出来ませんが作った曲をオーディオファイルに書き出す事は現状でも出来ます。Projects タブでまず曲をセーブし、次にセーブしたファイルを選択した状態で [→] のアイコンボタンをタップすると SMF や wav, mp3 にエクスポートできます。エクスポートしたファイルは <FLM User Files> というフォルダに格納されますが、これは何らかのファイラーたとえば"ESファイルエクスプローラ"なんかで普通にコピーして取り出せますし、端末をUSBストレージで接続すればUSBメモリみたいにしてパソコンに吸い出す事が出来ます。

アプリを動かすのに必要なスペックですが、これかなり重量級のアプリでまずアプリサイズが200MBオーバーとどでかく、インストールにはWiFi必須です。また実行時に必要なメモリやCPU負荷も相当なもので、ネクナナ君こと ASUS Nexus7 では快適にサクサク動作して問題ありませんでしたが、Android Walkman NW-Z1060 ではインストールは出来るものの再生テンポがヘロヘロになったりプチノイズが出たり固まってしまったりと正直、普通に使えるとは言い難い状況でした。おそらく2年以上前に発売された端末だと仮に動いても快適とは言い難いケースは多いような気がしますね。

ピアノロール等が全体にチマチマしたUIの作りなので、7インチ以下のスマホサイズだとタッチ操作による曲の作り込みはかなりストレスフルかと思います。7インチのネクサス7でギリギリぐらいじゃないかな、という感じでした。Nexus7 もそうですが今時のアンドロイド端末は大抵ブルートゥースや有線のマウスを使えるのでマウスを繋いで操作する事も可能ですが、本来タッチ基準で考えられているUIのため全部をマウスで操作は出来ず、例えばピンチでスケールを変更するなどタッチ操作を併用する形になります。

さて一番気になるレイテンシですが、アプリ説明にもありますがこれは『端末に依存する』となります。というのは FL Studio Mobile Android はレイテンシをぐっと下げるためのプログラム上の仕組みを実装しているそうですが、これが最新端末でないと有効でないということらしいです(参考記事

Nexus7 はその"最新端末"には当らないようですが、私がネクナナ君で試した感覚ではたしかにAndroid向け音楽アプリとしてはかなり良い感じで応答してくれるものの、やはり若干のレイテンシがあるように感じました。先の参考記事によるとNexus10だとiPad並に応答が良くなるそうなので、今後端末がさらにハイパワー高機能化が進んでいけばこれまでとは違って Android でも音楽アプリがじゃんじゃん出て来る、という可能性はあるかもしれませんね(まず有料アプリが AppStore ばりに売れる、という環境を整える必要もありそうですが…)

とりあえず Nexus7 で機能を試したり、2曲ほど簡単な曲を打ち込んで遊んで見たところを動画にまとめて見ましたのでお暇な方はご覧下さい。打ち込みに必要な一通りの手順の解説もしていますので、「FL Studio Mobile 買ったんだけどどやって使うんじゃー??」って言う方の参考にもなるかもしれません(英語ですがImage-Lineの公式アカウントにもっと良く出来た詳細なチュートリアル動画もあります)。

FL Studio Mobile Android on Nexus7 part1
基本操作編(5分)


FL Studio Mobile Android on Nexus7 part2
リアルタイム打ち込み編(5分)


FL Studio Mobile Android on Nexus7 part3
ピアノロール打ち込み編(7分半)


サンプリングやオーディオは使えませんしアナログシンセ的な音作りもできませんが、現バージョンでも十分遊びたおせるクオリティとボリュームがあるアプリなので、むかしRolandのSC-55やらYAMAHAのMUでDTMの打ち込みで遊んだなァーっていうようなオッサン(つまり私ですが)だったら2000円払う価値は十分あると思いますよ。


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2013年04月12日

バーデン・パウエルの息子さんが父親に関する本を準備中らしい

本日4月12日ですが、バーデン・パウエルの息子さんでギタリストのマルセル・パウエルさんが東京でソロライブをやりますね(たぶんもう始まってます)。

東京ONLYのため私は残念ながら家でチマチマとブログ更新などやっているわけですが、そのバーデン・パウエルに関する本を息子さんが企画しているようです。

息子さんといっても東京でライブ中のマルセルさんのほうではなく、お兄さんのフィリッピさんの方ですが。ちなみにフィリッピさんはピアニストで、1997年に父に率いられてマルセルと共に来日、東京でライブを行っているそうです。

"Filho de Baden Powell guarda 40 músicas inéditas e prepara livro sobre o pai"
バーデン・パウエルの息子は父の未発表40曲をキープしており、父親についての本を準備している

Folha元記事
2000年にバーデン・パウエルが亡くなったのち数年後、彼の一番上の息子であるピアニストのフィリッピ・バーデン・パウエル(Phillipe Baden Powell)は"父が居ない寂しさを紛らわせよう"として、イタニャンガの家にある父の遺品のすべてが残されている戸棚を探ってみよう、と決心したという。

バーデンが残した忠告に従い、2009年にフィリッピは "Afrosambajazz" においてギタリスト/アレンジャーのマリオ・アヂネーの助けを頼ることにした。

このアルバム"Afrosambajazz"では『ビリンバウ』や『オサーニャの歌』あるいは未発表曲といったバーデンの古典のビッグ・バンド編成による再解釈がもたらされた。

パリ在住のフィリッピは、現在およそ40曲のバーデン・パウエルの未発表曲をキープしている。

発売を予定している本においてその何曲かを公開することや、アヂネーと再び"Afrosambajazz"の続編を制作することを考えているという。

"なかなか予想を上回る内容なんですよ。お父さんは多くのタイトル無しの曲を残してくれていたんです、単にテーマ#1, テーマ#2,‥みたいな感じでね。ただメロディのみを書いてあるだけなので、僕がハーモニーをつけないといけないんだけどね。マウリシオ・カヒーリョ(Mauricio Carrilho, ギタリスト)に相談してみなきゃね。まだこれから色々手を加えようとおもってるから"
とフィリッピは語る。

(中略)

"Falando de Música com Baden Powell"(『バーデン・パウエルと音楽を語りながら』)というタイトルを予定している本に関しては、フィリッピはリオ市公立の各学校に本が配布されるように、リオ・デ・ジャネイロ市役所と取り決めを行ったと語った。

将来的なプロジェクトとしては、バーデンとヴィニシウスが1966年に発表した『アフロ・サンバ』(Os Afro-Sambas)は、当然のことながらフィリッピの照準に入っている。

この著名なアルバムの50周年となる2016年にむけて何らかのスペシャル・トリビュート・プログラムをフィリッピは考えているが、まだはっきりしたことは決まっていない。

"父がクラウジオ・サントロ(Cláudio Santoro, 作曲家)に宛てたメモに、『アフロ・サンバ』がいつの日かバレエになって欲しい、と書いていたのを発見したんですよ。そんな望みを持っていたなんて、父が語ったのを一度も聞いたことはありませんでした"

フィリッピは現在、その父の希望をコンセプト化し興行として行う試みとして、ブラジル・ダンス協会とコンタクトをとるつもりだという。

この記事でもすこし触れられていますが、2000年の死去以降バーデン・パウエルの遺品は住んでいた家に家族の手で保管されていたそうなんですが、それが最近モレイラ・サレス協会といういところに移管されまして、整理や分析が始まってるそうなんですね。

それについての記事をちょっと翻訳してご紹介します。

"Acervo de Baden Powell será preservado pelo Instituto Moreira Salles"
"バーデン・パウエルの所蔵品はモレイラ・サレス協会で保管される予定"

Folha元記事
ヴィニシウス・ジ・モラエスは、主な共作者の一人であるバーデン・パウエル(1937-2000)、彼がいうところの"アフロ-ブラジル・サウンドの森のお化け"であるバーデンに対しいつもこう言っていたという。
ギター(violão)こそは"愛の無さ、因習主義、そして無気力と戦う唯一の武器"であった、と。

彼の死後十数年にわたって、リオ州の田舎にあるヴァヘ・イ・サイ(Varre-e-Sai)の生まれであり、バーデンの未亡人であるところのシルヴィア・エウジェニア・デ・ソウザ(Silvia Eugênia de Souza)さんは、公的私的にかかわらず各種研究機関や団体といったものの手では夫の遺品は無頓着に扱われる、と考えていた。

その状況が変わり始めたのは、シルヴィア未亡人と息子達であるピアニストのフィリッピおよびマルセル・パウエル(Marcel Powell, ギタリスト)が、モレイラ・サレス協会が遺品の保全をするという契約を結んだ2012年末からである。

つい最近、リオ西部のイタニャンガにあるシルヴィアさんとバーデンが住んでいた家に保管されていたひと時代を超える所蔵品がごっそり、モレイラ・サレス協会に譲渡されたのである。

- 慎重なプロセス -

フォーリャは、現在カタログ化されるのを待つべく衛生保存状態にある、バーデン・パウエルの"開かれたトランク"へアクセスすることができた。

"まだやっと整理なかばの状態でしてね。非常に多くの手書きのモノがあるんですけども、良く注意して見て行く必要があるんですよ。例えばそれが確かにバーデン自身の筆跡であるかどうか分析する、とかいった事ですね"
と、ピシンギーニャ他の所蔵品の管理も行っている、モレイラ・サレス協会の音楽コーディネータのビア・パエス・レメ(Bia Paes Leme)は説明した。

協会はマウリシオ・カヒーリョをスコア(楽譜)の分析のために招致することを考えているという。

"マウリシオはバーデンと同じくメイラ(Meira[Jayme Florence])に師事していたので、諸々をよく判っている筈ですから"

ピシンギーニャの作品に対する熱意こそはまさに、バーデン一家が遺品を協会へ委ねようとさせた動機の一つでもあった。

"夫の遺品はウチですごく大事に保存はしていましたけどね、でもね、とりわけあまり理想的とはいえない気候条件にあっては、ちゃんとした保管は無理ってもんでしょ。ウチの子たち(フィリッピとマルセル)とも話したけど、IMS(モレイラ・サレス協会)がピシンギーニャの品々をどんなに大切に扱ってきたかが判ったのよ"
とシルヴィア未亡人は語る。

- ショパンからエベまで -

遺品の中でその数量が判明しているのが、3本のギター(アルゼンチン製1本、ドイツ製1本、そして残る1本は2001年に死去したルイス・ボンファがバーデンに献上したデル・ベッキオ[Del Vecchio, ブラジル]製)および、94枚の写真である。

この十数年、家庭環境というコンディション下で保管されていて酷く損傷したり紛失してしまった何かがあるかどうかについては、まだ評価できない状況だ。

なお初期段階において、いくつかのマスターテープにカビが発生していることはすぐに判明した。

また遺品においては、(クラシック音楽の影響を明示する)ショパンやバッハ、アンドレス・セゴヴィア(Andrés Segovia, 現代クラシック・ギター奏法の父といわれるスペインのギタリスト)、あるいはゲーハ・ペイシェ(Guerra Peixe, 『アフロ・サンバ』におけるアレンジャー)といった音楽家のテーマやメソッドを研究した大量のノートが発見されている。

楽譜に関しては、未発表の作曲と判別できるものはまだ発見されていないが、デジタル化される予定のそれらには『ビリンバウ』や『イエマンジャの歌』といった曲の原稿が、作者の手による演奏上の詳細、『Drop D チューニング』に関するバーデンの見解などとともに含まれることになる。

またもうひとつの興味深く重要な品々が、彼の音楽的興味やパーソナリティを覗かせてくれる、バーデンが生前に聴いていたレコード群である。

そのコレクションには、ジャコー・ド・バンドリン(Jacob do Bandolim)やセヴェリーノ・アラウジョ(Severino Araújo)のインストゥルメンタル、あるいはエリヴェルト・マルチンス(Herivelto Martins)、ジャメラオン(Jamelão)やアタウフォ・アルヴェス(Ataulfo Alves)のサンバ、といったものがある。

フランク・シナトラのような世界的なものだけでなく、"Mambo Italiano"や"O Banjo Voltou"を歌うエベ・カマルゴ(Hebe Camargo, 昨年お亡くなりになったブラジルで超有名な女性TV司会者、女優、歌手、マルチタレント)のような国内のものもある。

元記事には、『イエマンジャーの歌』の手書き原稿や、カビが生えたというマスターテープの画像もありますので興味ある方は見てみてください。

昔の有名な録音のマスターテープがカビてたっていう話はけっこう良く聞く話なんで、おそらくあまり大事に至らずクリーニングされ長期保存に耐えるよう調整されると思いますけど、そのほか大量にあるという手書きの諸々のマテリアルはかなり興味深い資料になりそうですね。

バーデン・パウエルがはじめて日本や外国にでてきたときに自分がボサノバのジャンルに入ってることに非常に驚いた、という記述はいくつかのボサノバ本で読んだ記憶がありますが、確かに遺品をみると彼のルーツはサンバというわけでもなくまたボサノバに心底傾倒したという風でもなく、どちらかというと正統派のクラシックギターが基本にあってそこに色んなジャンルの音楽を研究しつくして自身の中で昇華したことで彼ならではの孤高の音楽スタイルを確立し得た、というのが伺える感じがします。

これらの原稿類は今後デジタル化されて書籍やデータの形で出版される可能性はかなり高い(すくなくともフィリッペの本にはいくらか出てくるはず)と思われるので今から楽しみですね。
posted by blogsapo at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | MPB, BossaNova | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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