2013年05月23日

EMIがジョアン・ジルベルトに『伝説』のオリジナル・マスターテープを譲渡

ついにやりました!!

まずここまでの流れをざっとまとめましょう。

事の起りはこうです。1988年、EMI社はボサノヴァ初期の記念碑的作品群である3LP 『想いあふれて(Chega de saudade,1959年)』,『愛と微笑みと花(O amor, o sorriso e a flor,1960年)", 『ジョアン・ジルベルト(João Gilberto,1961年)』 を元に『ジョアン・ジルベルトの伝説("The Legendary João Gilberto")』というLPをつくり、1992年にはCD化もされました(日本では1993年に東芝EMIより発売)。

ところが、1.そもそもジョアン・ジルベルトの許諾を確認していなかった、2.オリジナルを無視して曲順を適当に入れかえた上さらに一部をメドレーに編集して無理矢理2LPに収めてしまっていた、3.勝手に音響処理を入れてオリジナルの音質を損なった、という三大理由によりジョアン先生のお怒りにふれてしまい、1992年から法廷での闘いが開始され、『伝説』もその元になった3アルバムも再発が不可能となる事態がこれまで続いていました。

ジョアン・ジルベルト的には3番目の「音質がヘンな風になってしまった」というのが特にお気に召さなかったようです。彼は絶対音感の持ち主であり、ステージでのマイクに異常に拘りがあったり、あるいは何かの録音の都度に他のバンドマン等と音程やら音質の事で揉め事になって何時間も潰す、という話が彼とかかわった関係者の証言では必ず出てくるぐらい音質に神経質なので、なるほどそうだろうなと納得できる話です。

そして、2011年12月司法上級裁判所(o Superior Tribunal de Justiça)がジョアンの訴えを認め、賠償およびEMIは今後同アルバムおよびその元になったアルバムのリマスターや再商品化を行うことができない、という裁定がなされました。

ただこれらの作品のマスターテープの管理はこれまで EMI 側が保持しており、そのため2011年からこれまでの間、この3アルバムの貴重なオリジナル・マスターは衆目から完全に隠匿され誰にもリマスターできない『とらわれの身』となってしまっていたわけです。

その状況が変るかもしれない希望の光が表れたのが今年4月、つまり先月の26日。リオ第二民事法廷(a 2a Vara Cível do Rio)が EMIからジョアン側へこれらのマスターテープを譲渡するように、という仮処分(Liminar)が下されました。

期限ぎりぎりにEMI側のマスターテープ管理業者である Iron Mountain Brasil社の保管場所からひっぱりだされてきたダンボールとプチプチ・ビニールで梱包された包みをジョアン側の弁護士団は受けとらず、またリオ第七民事法廷(a 7a Câmara Cível do Tribunal de Justiça do Rio)のアンジラーデ(Andrade)裁判官が「ジョアン側が受けとったマスターを管理する方法が述べられていない」事を理由にこの仮処分を保留としました。

ところが先日、ジョアン側弁護士が「Iron Mountainと同様にスペシャリストである専門業者と契約してある」と指摘をしたところ、裁判官はそれを認め保留を撤回、つまり再び仮処分が有効となりました。

"マスターの管理を保証していたため、裁判所がEMIにLPのマスターを譲渡するよう命令"
"Com garantia de preservação, Justiça manda EMI devolver LPs a João Gilberto"

Folha Onlineソース記事

そして昨日22日午後3時(現地時間)マスターテープの引渡しが履行されたようです。

"法闘争の後、ジョアン・ジルベルトに引き渡されたアルバムのマスターテープ; 画像をご覧ください"
"Após briga judicial, masters de discos são devolvidas a João Gilberto; veja imagens"

O Globo 引用元記事
これがEMIレコードと争った歌手ジョアン・ジルベルトの3つのレコードのマスターである。

これらは保温ケースに封印されて水曜15時に、ジョアンの代表者であるところのセントロ・ド・リオにあるハファエウ・ピメンタ(Rafael Pimenta)弁護士のオフィスへ届けられた。もう既にそこにはなく、メディア保管のスペシャリストであるRio Off Site の職員グループがボンスセッソ(Bonsucesso)にある保管場所に搬入済みである。

ドラマの次の展開は、マルコ・マゾーラ(Marco Mazzola)プロデューサーによるテープの状態についての鑑定によって果してどのような法裁定がなされるか、だ。

ということで、リンク先の元記事にはあの3枚およびEP版"ジョアン・ジルベルト映画オルフェを歌う(João Gilberto cantando as músicas do filme Orfeu do Carnaval, 1959年)"のマスターの画像がありますんで、是非ご覧ください。はああーこれがあの有名な・・・と感慨しきりですね。


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2013年05月20日

Android でもMIDIインターフェイスを使えるようになってた

ちょっと前に FL Studio Mobile for Android をご紹介した際に”Android はiOSと違って MIDI キーボードやオーディオ・インターフェイスを接続することが出来ない”的な事を書いたのですがこれは間違いで、実は出来るようになっていました。

主にタブレットに搭載された Android OS 3.1 (より正確には API Level 12 を導入したバージョン)から AndroidOS に USB ホスト機能の制御用APIが追加されていて、これを使ってアプリ側で制御プログラムを書けば USB-MIDI デバイスを使えるみたいです。

USBホスト機能』とは、簡単にいうとホスト機器(この場合Androidのタブレットやスマホ本体のこと)にUSB接続したデバイス(たとえば有線マウス)をホスト側が主体となって制御する機能のことです。

例えばネクナナ君こと Nexus7 をUSBケーブルでパソコンに繋いだとします。するとパソコン側(ホスト)からネクナナ君(デバイス)に入っているファイルを取り出したり、ファイルをネクナナ君にコピーしたり、はたまたUSB充電出来るようになったりします。これはパソコン側に『USBホスト機能』が装備されているおかげで出来るわけです(お店で売っているWindows/Macには必ずついている機能です)。

ということはもし Nexus7 側に『USBホスト機能』があったら、Nexus7 をホストにして別のスマホとかを繋いで同じように使えるのかな? と考えると思いますが、条件はありますがそのとおり。使えます

USBホスト機能をもつアンドロイド端末、例えばキーボード合体/分離ができる変則タブレット ASUS TF101 Transformer に Android Walkman NW-Z1060 を接続すると、あたかもPC接続の時のように”USBでパソコンに接続します”というダイアログが表示され、TF101側で "ES ファイル・エクスプローラー"のようなファイラーを使って Walkman Z のファイルを閲覧したりコピーしたり出来るようになります。

いきなり Nexus7 ではなくTF101トランスフォーマーに話を振ったのは、「条件がある」と書いたとおり Nexus7 の場合は簡単にはいかないからです。Nexus7 は USB ホスト対応機種で有線マウスや外付けキーボードは問題なく動きますが外付けUSBストレージに対応しておらず、アンドロイド・ウォークマンを繋いでもファイラーからウォークマン側のストレージを認識できません。全く方策が無いわけではなく内部的には可能な状態になっているので GooglePlay で公開されている "Nexus Media Importer" というアプリを使うと「一応」アクセスできるようになります。ただし一般のファイラーほど機能性は高くなく、しかも有料アプリです(もちろん製造元である ASUS が公開しているアプリでもないです)。

ついでながらUSBストレージに対応している TF101 トランスフォーマーも、左のUSBポートはうまくいくんですが右のポートは何故かストレージホストになりません(マウスはどっちも使える)。このようにアンドロイドのUSBホスト機能はまだ過渡期にあって『これをやりたい場合こうやってコレを繋ぐと必ず動きます』とは言いにくいのが現状なんですね。

『USBホスト機能』が手持ちの端末と機材でちゃんと機能するのかどうか、どうやったら確認できるか?? これはスペック表にも書いてない事が多く不確定要素が沢山あり、おおざっぱには「有線のマウスやキーボードを接続して使える機種は対応している可能性が高い」とは言えるものの、実際に目の前でブツを繋いでやってみるまで判らない、という状況にあります。

そういう現状を前置きした上で、本題に入ります。

- Nexus7 に Roland の USB-MIDI インターフェイスを繋いで試してみる -

先日ちょっとYoutubeをブラブラと散策していると、"Using a MIDI controller with Caustic 2.1 on Android " という動画を見つけてしまいました。この動画は、Android 用シーケンサー/シンセアプリとしてかなりお勧めな Caustic2 というアプリの作者公式アカウントの宣伝動画ですが、AKAI の USB MIDI キーボードを Android スマホに接続して Caustic 2 を鳴らしています。

「なんだ!?こんなことがアンドロイドでも出来るようになってたんだ!?俺は無知だった!!!ブログで嘘八百書いてしもうたっ!!」と大袈裟に反省した後、ちょっと調べてみました。

今のところは Android OS 側で統括的に MIDI やオーディオ・デバイスを扱う仕組み(ライブラリ/API)が用意されているわけではなく、あくまでもアプリ作者が個々に USB ポートを MIDI デバイスとしてドライブする実装を入れている場合に限るため、一部のアプリが実験的に実装を始めている、というところのようです。

とりあえず見つけたところでは

○"Caustic2"(トライアル版だがセーブ機能以外ほとんど全部使える)

○"Keyboard Sounds Pro - Midi/USB"(有償)

○"普通のアナログシンセサイザー MIDI対応版"(無料)

といったアプリが USB MIDI キーボードを接続して演奏できるようです。

ざっと探しただけなので、他にもあるかもしれませんし、演奏用以外でもたとえばMIDIコントローラー的なアプリだとかMIDIイベントモニター的なものもあったり、さらにはUSBオーディオ・インターフェイスを接続して録音したり波形編集用の良さげなアプリも出現してきているようです。

なんとなく"Android用 MIDI キーボード"が無いといけない気になってましたが、考えてみればそもそも iPhone/iPad と異なり通常規格の USB ポートを備えている端末が多いわけなんで、敢えて"Android用" などと銘打って新しいハードウェアを商品開発する必要はなく、これまでPC用に出ているUSB機器を流用すれば良かったんですね。ただソフトウェアの開発環境、Android のシステム側がまったく音楽に関して整備されていない、あるいはされていなかった、という事だけが問題だったわけです。

Android の音楽周辺も停滞してたわけでなく私がボケーッとしてる間にけっこう色々始まってたんだなあ、と認識を新たにしました。

先に述べたとおり過渡期的な状況なので、 USB MIDI キーボード, インターフェイスだったら何でもいける、 Android 3.1以降で『USBホスト』対応ならどんな端末でもいける、というわけではなく実際やってみると動かないということもあり得るという事を頭の隅に常においておく必要がありますが・・・

見ているだけは辛抱たまらず自分でも試してみたくなったので、押入れから昔使っていた骨董品になりかかってる機材をひっぱりだしてきました。

android-midi-devices-0.jpg

「ヲイヲイまた古いの持ちだしてきたな」とオッサンからツッコまれそうですが・・・だいたい15年ほど昔の機材ですかね。

YAMAHA MU100R
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YAMAHA CBX-K3
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GRAVIS SERIAL-MIDI ADAPTOR
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もっと懐かしい25年ぐらい前の機材もあるんですけど、それはまた別の機会に・・・しかし、ここで重大問題発生!!ていうか最初から気がつけよ、という話なんですが MIDI インターフェイスが今はほとんど絶滅してしまったゲームポート接続タイプでした。

当時日本のパソコン市場で最大勢力であった NEC PC-9801 シリーズにはCバス(ってわかります?)のMPUシリーズとかRS232Cポートに繋ぐMIDIインターフェイスがありましたが、写真のヤツはまだUSBが普及してない時代のDOS/V(ってわかります?)のゲームポートに繋いで使うシロモノです。

しかもこれ、なんとMIDI機器をつないでさらに2つゲームポートを使えるというスグレモノなんです。

android-midi-devices-gravis-midi-adaptor-1.jpg

しかしスグレモノであった時代は遠い過去に。これではどうしようもありません。

せめて音源がもうすこし新しい機材だと音源モジュール側にUSBポートがあってMIDIインターフェイスなしで接続することも出来るんですけど、YAMAHA MU100R のリアパネルにあるのは

android-midi-devices-mu100r-host-selector.jpg

という、これまた先カンブリア時代か??という懐かしのシリアル接続ポートです。ちなみにメイド・イン・ジャパンですよ。

android-midi-devices-mu100r-made-in-japan.jpg

というわけで手詰りになってしまったので梅田のヨドバシに出掛けて、見たところ一番安価だった Roland の USB-MIDI インターフェイス UM-ONE mk2 を買うてきました。

um-one-mk2-unbox-0.jpg

本当はアプリの説明書きとかに動作確認済みのインターフェイスを買ったほうが安全なんですけどね。同シリーズの古いモデルはリストにあったのですが、でもまあ同じシリーズならいけるだろう、とタカをくくりこれにしました。

なお iPad をお持ちの方は、ワタシのように「はたして動くのだろうか??動作リストにも無かったし・・・」などとビクビクする必要もなく、メーカーの保証のもと安心動作できます。

um-one-mk2-unbox-1.jpg

パッケージの中身です。ドライバー、取説、そして本体。 普通は PC の USB ポートに接続し、二股にわかれた MIDI-IN と MIDI-OUT に機材を繋いで使用しますが、PC の代りにネクナナ君を繋ごうというわけです。

um-one-mk2-unbox-2.jpg

Nexus7 の USB ポートはマイクロBタイプなので、普通の大きさの USB ではソケットに入りません。なので、こういうアダプターを用意します。

android-midi-devices-elecom-mpa-maemcb010bk.jpg

こういうのは家電量販店なら600円〜800円ぐらいですかね、日本橋のパーツ屋みたいなとこなら200円とかで売ってたりするかもしれませんが、必ず「スマホをUSBで接続してマウスやUSBメモリを云々」という説明があるものを選びます(※重要)

さて、どのアプリでテストするかですが最初 Caustic2 を使おうかと思ったのですが、Caustic2 はどうも MIDI-IN には対応しているけども MIDI-OUT には対応していないみたいなので、適当なものを探していたところこういうページを発見しました。

"Android USB MIDI Driverのご紹介"
http://blog.kshoji.jp/2012/11/android-usb-midi-driver.html


上の Google Play へのリンクで紹介した MIDI イベントモニターのアプリはこの方が作者のようです。素晴しいことにApacheライセンス2.0で Android USB-MIDI のライブラリを公開して下さってます。アプリのサンプルソースもあるので、有り難くこれを使わせて頂くことにしましょう。画面をタッチして MIDI-OUT にノートON/OFFを流せますし、IN/OUT に流れるイベントを文字で目で見て確認できるからです。

さてさて、およそ10年ぶりくらいに MU100R の電源を入れると・・・・おおーっ、動いた!! さすが日本製!!!・・だからかどうかはともかく、若干不安だった液晶にも不具合なく綺麗に立ち上がってくれました。

android-midi-devices-mu100r-power-on.jpg

動かしてそういえばと思い出したんですけども、パワーオンのウェルカム・メッセージがこのキスマークのと、なんか得体の知れないキャラクターみたいなのが出る時とあるんですよね。

こっちがその得体の知れない生き物。

android-midi-devices-mu100r-mu-kun.jpg

ミュー君だかミュージ君だか、あるいはミュージッ君みたいな名前だったような気がするんですが思いだせません。ネットをちょっと検索してみたけど見付からなかったです。ご存知の方はよければご一報を。

Nexus7 に先程ソースからビルドしたサンプルアプリを流しこみ、USB ケーブルを繋ぎます。アプリは起動状態にしたままで、買ったばかりの UM-ONE mk2 をネクナナ君に接続。

android-midi-um-one-mk2-con-nexus7.jpg

すると、このようなダイアログが出ますので許可します。

android-midi-driver-sample-0.png

インターフェイスに通電されていることを示すLEDが灯り、ちゃんと動いているっぽいので、ひとまず安心です。とりあえず5000円をドブに捨てなくて済みました。

android-midi-um-one-mk2-con-nexus7-succeed.jpg

ところが画面の鍵盤(灰色のボックスが並んだ部分)をタッチしても、全然音源が鳴らない。信号のLEDがチカチカするので、たしかに MIDIノートは送られてるように見えるんですが・・・ここで、結線を確認して間違いに気がつきました。MIDI-OUT のケーブルだと思ってたのが・・・・

android-midi-um-one-mk2-con-midi-out.jpg

わかります?よく見ると "CONNECT TO MIDI OUT" と書いてあるんです。つまりこれは普通で言うところの "MIDI-IN" です。キーボードとかの MIDI-OUT と書いてあるポートに"接続しなさい"というのですから実際は MIDI-IN ポートなんですね。まぎらわしいわっ!!

おそらく間違いやクレームを減らすための"親切表記"なんでしょうね・・まあよく注意して見なかった私も迂闊でした。というわけで "CONNECT TO MIDI-IN" と書かれたケーブル、つまり実質の MIDI-OUT を MU100R の MIDI-IN に繋ぎなおします。

android-midi-um-one-mk2-con-midi-in.jpg

で、アプリの鍵盤を押して見ると・・・

android-midi-driver-sample-play-mu100r.png

動画:


鳴ったよーー!!

というわけで紆余曲折ありましたがなんとか実験成功です。キーボード YAMAHA CBX K-3 を繋いだ実験も一応うまくいったようです。ただ鍵盤が悪いのか、他の理由かわかりませんが不要なMIDIイベントがものすごい勢いで流れ、たまにアプリがハングアップしてしまうようです。鍵盤の入力をリアルタイム・レコーディングできるアプリもすぐには見当らないので(Caustic2 は音符のリアルタイム・レコーディングはタッチUI鍵盤でも出来ない仕様)、レイテインシとか動作については今後ボチボチ調べていきましょうか。

ところで、Android Walkman Z こと NW-Z1060 は OS 4.0 にバージョンアップしてからブルートゥースのキーボードやマウスが使えるようになりました(HIDプロファイルに対応、出荷時の 2.3 の時は非対応)。ひょっとしてUSBホストにも対応してたりとかしないだろうか・・・と淡い期待を抱いて、変換コネクタを使って無理矢理に接続を試みてみました。結果・・・駄目でした。そもそもUSBマウスやキーボードですら機能せず、Walkman Z はUSBホストには全く対応していないか、またはケーブルが対応していないようです。

android-midi-um-one-mk2-con-walkman-z.jpg
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2013年05月16日

ジョアン・ジルベルト初期ODEON録音マスターテープの引き渡しは保留

結局、マスターの移譲の件は保留(または取り消し)となったようです。

"Justiça suspende liminar e determina que obra de João Gilberto fique aos cuidados da EMI"
"裁判所が仮処分を保留し、ジョアン・ジルベルト作品はEMIの管理下の元におくことを規定"

Folha の引用元記事
一審における2つの敗北の後、EMI社は5月14日(火曜)に81歳のジョアン・ジルベルトの3枚のLPおよびEPのマスター(録音原盤)を彼に渡すよう定めた法的措置を撤回させることに成功した。

EMIによる訴えが、リオ第七民事法廷(a 7a Câmara Cível do Tribunal de Justiça do Rio)の裁判官アンドレ・グスタヴォ・コヘア・デ・アンジラーデ(André Gustavo Correa de Andrade)によって受け入れられ、先の4月26日のジョアン・ジルベルトに有利な仮処分が保留されたのである。

"現段階では、係争中の案件の証拠品が統括的に保管されていることが最も重要であるように思われる"と昨日(5/14)に出された文書において裁判官は述べている。

彼によれば、仮にEMIが措置に従ってマスターを受け渡した場合ジョアン・ジルベルト側がそれをどのように保持管理するのかという事についての情報が欠けている、という。

"マスターがこの種の資材を保管し理想的な状態を保つのに特化している業者の管理下にあり続けた場合の事を何ら吟味せず ただ単にマスターを移譲してしまう、というのは軽率な処置である"と裁判官は文書において述べている。

これにより、EMIはマスターを保持しつづけることになる──マスターは裁判所が指定した専門家であるマルコ・マゾーラ(Marco Mazzola)プロデューサーの手によって鑑定作業が行なわれることになっている。

その鑑定の後、本件は近日中にリオ第七民事法廷(a 7a Câmara Cível do Tribunal de Justiça do Rio)の3人の裁判官による判断を仰ぐことになるだろう。

だんだん話がややこしくノヴェーラ(長いストーリー)みたいになりそうな感じになってきたので、いくつか用語について補足しておきます。

これまで私が読んできた各記事では『原盤』の事は"matriz"(主にレコード原盤)ないし英語の"master"と表記されていたため、果たして録音のマスターテープの事を言ってるのかそれとももしかしてレコードの生産のプレス原盤の事なのか、もうひとつ確証が無かったのですが、別の記事ではっきり"fitas"(テープ)と書いてあったので、録音した当時のマスターテープの事を指していると考えて間違いないです。

『仮処分』という単語ですがこれは原文では"Liminar"という法律関連の単語で、法制度の違いのためそのまま日本語に当てはめられる単語はないようです。

英語に翻訳した場合は"Preliminary injunction"(予備判決あるいは差し止め)となるようです。この単語をネット検索しますとしばしば Apple とサムスンの係争関連の記事がでてきますね。昨年ぐらいの一時期、毎週のようにAppleが勝っただの今度はサムスンが負けただのニュースが流れた時期があったと思いますが、あれと似たような事が今 EMI とジョアンの間で起きてるんじゃないかな、と想像します。

"Liminar"をインターネットのポルトガル語辞書で見てみますと次のようになります。

dicionário online de português の Liminar の項
(本案件の判断を抜きにして)回復不可能な損害を避ける意図により裁判官が何らかの措置を行うことを言う。

一方『仮処分』は日本の法制度において主に債権者からの申し立てによって裁判所が暫定的に係争物を差し押さえることを言うようです。
Wikipediaの『仮処分』の項

法律には疎いほうですのでそれなりに一生懸命調べましたが、間違いはあるかもしれません(間違いがあった場合、ご指摘頂ければ感謝いたします)。

何れにせよ"Liminar"そのものズバリの法的制度は日本には無いのでどの単語をあてはめてもピタリとはならないと思いますが、さりとて「裁判所がジョアン・ジルベルトに有利な"Liminar"を決定」などと書いてもサッパリなんのこっちゃ解らないと思いますんで、とりあえずここでは『仮処分』を当てはめています。

他にも裁判のシステムの違い等からそのまま日本語に翻訳できない単語がありますけども、そういうあやふやな単語はカッコをつけて中に原語の単語を挿入しています。


ところで件のマスターテープですが、実はEMI側は一応期限ギリギリにジョアンの弁護士のところに持ち込んでいたようです。

"Liminar que concedia a João Gilberto o direito sobre alguns de seus discos é revogada"
"ジョアン・ジルベルトに彼のレコードのいくつかの権利を認めた仮処分が取り消される"

o GLOBO の引用元記事
先の5月8日、シモーネ・ロペス判事により発行された仮処分に応対するため、EMIは Iron Mountain 社 ── ジョアン・ジルベルトだけでなくビートルズやピンク・フロイドのマスターテープも保管する会社である─を動かした。しかしながらジョアン側の弁護士達はマスターテープを受けとらない決定を下した。

─ 私たちは17時58分、定められた期限内に彼等の事務所に到着し、それから40分ほど会議室で待たされました─ EMIを弁護するハフェエウ・ミランダ(Raphael Miranda)は語る。そこで彼等はマスターを受け取らない、と知らされたので私たちは Iron Mountain 社にマスターを持って元の保管場所へ戻しておくように伝えました。それから裁判所の第二審(segunda instância da Justiça)へ行き、そして今や私たちは新しい法判断を手にしている、というわけです。

オ・グローボの取材によれば、ジョアン・ジルベルト側の弁護士らは、仮処分によって定められた期限に合致する営業時間外にEMI側の弁護士が到着したため受け取りを拒否したのだ、という。ジョアンを弁護する立場の彼らは、マスター譲渡の手続きは既に裁判記録にあるのにもかかわらず、"ジョアン・ジルベルトがテープ保管の方法を伝えていない"と断じて今回の処分を取り消したアンジラーデ(Andrade)裁判官を批判した。

裁判上の規定に従い、マルコ・マゾーラ(Marco Mazzola)氏がテープの鑑定を行うことになる。
ここで出てくる Iron Mountain 社は、世界中に支社がある大きな会社らしく、検索すると日本法人もでてきます。恐らく世界中の有名な録音物を保管・管理している会社なんでしょうね。こんな会社があるなんて、今回の記事を読むまで私は全く知りませんでした。

この記事の Iron Mountain は恐らくブラジル支社で、この記事から貴重なジョアンの初期ODEON録音3作のオリジナル・マスター・テープ(不愉快なリバーブや疑似ステレオの処理がされていない)はちゃんと存在しており、それは Iron Mountain Brasil 社が保管している、という事がわかります。

さてこれからどうなるのか、なかなか難しいところですが取り敢えずは近日中に本件に関する判断が下されるようなのでしばらく成行きを見守りましょうか。

ところで、じつはこの記事はこんな書き出しで始まっております・・・
キャンセルされたジョアン・ジルベルト80歳記念ツアーを企画した興業主から57万レアル(だいたい三千万円ぐらい)を取り立てるため、リオ・デ・ジャネイロ市立劇場財団(a Fundação Teatro Municipal do Rio de Janeiro)が訴訟を起こす、と o GLOBO が伝えたその同じ日に、ジョアン・ジルベルトはさらなる苦境に立たされる。
この『新たな苦境』は今回ご紹介した"仮処分保留"の話なので、その前に苦境がもうひとつある、というわけです。

まぁお察しでしょうが、要するに2011年に企画されたジョアン80歳記念ツアーの一つとしてリオ市立劇場(Teatro Municipal do Rio de Janeiro)での公演予定があったんですけども、これも含め記念ツアー自体が全部キャンセルされてしまった。それで、その時に市立劇場財団が事前に支払った21万レアルと、違約金そのほか延滞利息等全部あわせて57万レアルを(当時市立劇場が契約していたとされる)興業主 Maurício Pessoa Shows と Eventos Culturais Ltda. に対し支払うように訴えをPGE(Procuradoria Geral do Estado)に起したんですけども、興業主のほうは「お金は当時1センターボに至るまで全部ジョアンの関係者に渡している」という話で、興業主としては「まだ心情的に再度ライブをしてもらえるんじゃないかとかそういう期待はしているけども、正直こんな金額をだまって補償するのは無理」という事になり結局ジョアン先生ご本人にお鉢が回ってきている、というわけです。ただ今のところ法的な手段に出ているのはテアトロ・ムニシパウから興業主に対してだけで、ジョアン先生ご本人が訴えられているわけではないようです。今後どうなるかはわかりませんが・・・

詳しい記事はこちらになりますが、こんな話ばっかり読んで気が滅入って力尽きたので、ポルトガル語読める人はソース記事をお読みください。
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2013年05月15日

Walkman Z(NW-Z1060) システム・アップデートの通知

今日久し振りに Android Walkman Z の WiFi を On にしてみたら、システムアップデートが来とりますよーという通知がひょこっと出ました。

ヲイヲイおっさん今頃いつのはなししとんねん、という話題ですがどうやら5月9日に始まってたみたいですね。

ちなみに買った当初は Android OS 2.3 だったんですけども今は OS 4.0 になっております。この 2.3 から 4.0 への Update は昨年の12月上旬に提供開始されているんですがその Update は通知も何もされず、そもそも端末単体では Update も出来ないので注意です。出荷状態の OS 2.3 のままだとそのまま気付かずに平和な日常を送り続けている可能性があります・・というか、ワタシは一ヶ月ぐらいたってから気がつきました。いや、なんか4.0になるらしーよーという話はどっかで読んだんですけど何時までたっても通知がこないなー・・とか思いつつボーッとしてましたよ。

なので、4.0に既に上げている人は、私と同じようにネットに繋ぎさえすれば今回のアップデート通知が来るはずなので心配入りませんが、未だ 2.3 のままにしている人は自分でソニーのサイトに取りにいってファイルをダウンロードし、PCとUSB接続して手動アップデートする必要があります。

さて、手動でも端末からシステム・アップデートする場合もそうですが、アップデート時にはある程度ストレージ(データ保存領域)の空きを確保しておかなければなりません。

今回のアップデートの場合は

2013-05-15-nw-z1060-update-attention.png

という注意書きにあるとおり「本体のUSBストレージ」に 310 MB以上、「本体の内部ストレージ」に10%(100MB)以上の空きを確保しておかないといけないようです。

このストレージ容量の確認は、本体の設定アプリを起動してその名もズバリ[ストレージ]を選ぶと確認できますが

2013-05-15-nw-z1060-update-setting-strage.png 2013-05-15-nw-z1060-update-setting-strage-internal.png

ここで「USBストレージ」の空き容量表示はスクロールした最後のほうに、「内部ストレージ」は中ほどにあるので間違えないように注意します。前半が「内部ストレージの内わけ」で後半が「USBストレージの内わけ」です。

この2つは何がちゃうのかといいますと、内部ストレージは各種アプリ本体やアプリに組み込まれたデータを格納するエリアで、USBストレージはアプリ以外のデータ、例えば取り込んだ音楽や画像ファイルだとかアプリに組み込まれないデータ(テキスト・エディタの書き出しデータなど)を保存するエリアです。通常のスマホだと SDCard とかになっている部分がUSBストレージエリアと思ってOKです。

今回のアップデート・ファイルのサイズがおよそ 250MB なので作業エリアを含めてUSBストレージに310MBは必要になる、まずそこへアップデートファイルをダウンロードし、それをシステムへ組み込んでいく作業を行うアップデート用アプリが安定動作するために内部ストレージが100MB程度は必要、とこういうわけです。

確認してもしUSBストレージが不足していたら音楽や動画ファイルを削除してみる、内部ストレージが不足していたら不要なアプリをアンインストールしてみる、というやり方で必要な空きを確保します。

空き容量の件の他にも脅し文句のような注意文言が並びますが、気にしても始まらないので同意をチェックし、バッテリが十分充電されている事を確認、念のためバッテリー充電を繋いだらさっそく作業開始。

250MBぐらいのファイルのダウンロードが始まりますので9分ぐらいで茹で上がるパスタでも茹でながら待ちます。

2013-05-15-nw-z1060-update-baixando.png

ファイルのダウンロードが終るといよいよアップデート開始ですが、ここが実質のポイント・オブ・ノーリターンです。ここまでは失敗したり、キャンセルしても何度でもやり直しがききますが、ここから先は失敗すると端末が文鎮になる危険をはらみますので慎重に作業します。

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バッテリに問題ないのを確認したら、十字を切るあるいは2回カシワデをうつなどした後におもむろに[再起動してアップデート]のボタンをタップします。ここから先は、ケーブルを抜き差ししたりだとか余計なことは一切せずにそっと放置します。もちろん電源ボタンをいらうなどもっての他です。先ほど茹でたパスタがのびないうちに喰いながら様子を観察しましょう。

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ドロイド君がでてきたり、プログレスバーがでてきたりしますが、最後に「アプリの最適化」とかいう作業が完了すると危険ゾーンは通過しています。おめでてとうございます。

設定から[端末情報]を見ると、OSバージョンとビルド番号が更新されているのを確認できます。

2013-05-15-nw-z1060-update-new-version.png



さて、とりあえずアップデートしてみたものの、今のところ特にどうという差は無いようです。OS 2.3 → OS 4.0 のときはこれはもうあちこち色々変ったりアプリが追加されたりえらく良くなった感があったんですけども、今回はマイナーアップなのでこんなもんでしょう。

ちなみに、事前の脅し文句にイコライザー設定だとか音楽プレイヤーまわりの設定が消えるよ、みたいな事が書いてあったような気がしたのですが、実際には消えていませんでした。

案内によれば今回のアップデートは"メディアプレーヤーの動作安定性の向上"が目玉のようですので、しばらく使ってみると「お、なんか安定してるなあ」と実感できるような内容なのでしょうかね。
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2013年05月13日

ジョアン・ジルベルト初期ODEON録音原盤の行方は…??

先日、ジョアン・ジルベルトの初期ODEON録音3枚(およびEP盤1枚)、裁判の原因になったEMI編集盤『ジョアン・ジルベルトの伝説』の元になった3枚のLPですが、これの"マスター"をEMIからジョアン側に受け渡すようブラジルの裁判所が仮処分を下した話題をお伝えしましたが、期限の5月8日を過ぎた現在どうなったのか・・?実はまだ原盤は届けられていないようです。

一時は"裁判所が仮処分を取消した"という情報も流れたのですが、それは間違いでリオ裁判所のセルジオ・ヴァゼンベルギ(Sérgio Wajzenberg)判事によると5営業日以内にEMIは原盤をジョアン側に受け渡す事ように、とのことです。

"Perícia vai avaliar estado de conservação das matrizes de discos de João Gilberto"
"ジョアン・ジルベルトの原盤の保存状態についての専門鑑定が行なわれる予定"

Folha元記事
法規定により、EMIが保持しているジョアン・ジルベルト作品原盤が引き渡された時点で、保管状態を確認するための技術的な鑑定が行なわれる予定となっている。

3つのボサノヴァの重要作品 "Chega de Saudade", "O Amor, o Sorriso e a Flor", "João Gilberto" そしてEP盤『ジョアン・ジルベルト映画オルフェを歌う(João Gilberto cantando as músicas do filme Orfeu do Carnaval)』が分析にかけられることになる。
EMI側も黙って素直に引き渡すわけにはいかないので、まだ暫くモメそうな予感はありますね。ブラジルの法制度を知っているわけじゃないのでよく判りませんが、例えば「そもそもこの仮処分が違法だ」として新しい裁判を始めるとか、最悪の場合「探してみたが原盤が既にどこかに失なわれていたので渡せない」などという事も無いとは言えません。

しばらく成り行きを見守りましょうか。
posted by blogsapo at 22:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | MPB, BossaNova | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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